ベトナムの都市部を歩いていると、ひときわ目を引く存在として見えてくるのがKATINATです。ホーチミンやハノイだけでなく、ダナンのような人気都市でも存在感を増しており、若い人たちが集まる“今っぽいカフェ”としてよく名前が挙がります。ベトナムのカフェチェーンといえばHighlands CoffeeやPhúc Longを思い浮かべる人も多いですが、KATINATはその中でも少し違う空気をまとっています。
ひとことで言えば、KATINATは「コーヒーの店」であると同時に、「都市のライフスタイルを売っているブランド」です。もちろん飲み物自体の魅力もありますが、それ以上に、店舗デザイン、立地、写真映え、メニューの見せ方、ブランドの物語、若い世代との距離感の近さなど、いくつもの要素がうまく噛み合って支持を集めています。ベトナムのカフェ文化を少し深く見ていくと、KATINATの人気は偶然ではなく、かなり計算されたブランド設計の結果だと感じられます。
一方で、KATINATについて調べ始めると気になってくるのが、「なぜあそこまで人気なのか」「どんな人たちに支持されているのか」「Phê Laとはどういう関係なのか」という点です。名前はよく見るけれど、単なる流行りのチェーンなのか、それとももっとベトナムの消費文化や若者文化を映す存在なのか。このあたりを整理しておくと、ダナンやホーチミンでKATINATに入ったときの見え方がかなり変わってきます。
ここでは、KATINATのブランドの成り立ち、人気の理由、支持層、メニューの特徴、他チェーンとの違い、そしてPhê Laとの関係までまとめて深掘りします。単なる店舗紹介ではなく、ベトナムの現代カフェ文化を読む視点で整理しているので、ダナンのカフェ記事の読み物としてお楽しみください。
KATINATとはどんなブランドか
KATINATは、現在は「KATINAT Coffee & Tea House」という名称で展開しているベトナムの人気ドリンクチェーンです。もともとは「Katinat Saigon Kafe」として知られていましたが、近年はコーヒーだけでなく、ミルクティーやフルーツティーを含む都市型ドリンクブランドとしての色を強めています。そのため、名前から受ける印象以上に、幅広い客層を取り込める設計になっています。
ブランドの核にあるのは、どこか“サイゴンらしい都会感”です。報道では、KATINATの名前は旧サイゴン時代の「Catinat」に由来し、そこに現代的な印象を持たせるための「K」を重ねたものだと紹介されています。この由来が象徴的で、KATINATは単なる新しいチェーンというより、昔のサイゴンの記憶や街の雰囲気を、現代の若い世代向けに再編集したブランドとして見ると理解しやすいです。
また、公式サイトでも「新しい風味を届けること」「世界やベトナム各地の豊かな土地からインスピレーションを受けること」「開放的で親しみやすい空間づくり」を前面に出しています。つまりKATINATは、単に一杯のコーヒーを売るのではなく、味・空間・過ごし方を含めた体験型ブランドとして自分たちを位置づけています。
KATINATはなぜあんなに人気なのか
KATINATが人気なのは、一つの理由だけではありません。味、空間、立地、ブランドの物語、SNSでの広がり、メニューの広さなど、複数の要素が積み重なって「行ってみたい」「つい選んでしまう」ブランドになっています。ベトナムの都市部ではカフェが非常に多く、競争も激しいのですが、その中でKATINATが目立つのは、商品以上に“見え方”の設計が上手いからです。
1. 店舗そのものに存在感がある
KATINATの大きな強みの一つが、店そのものの見せ方です。報道でも、KATINATは大きく印象的な店舗や目を引くドリンクデザインによって強く認知されてきたと紹介されています。実際、ベトナムの都市部でKATINATを見かけると、ただのチェーン店というより「ここは今人気の場所だ」と感じさせる視覚的な力があります。
これは単におしゃれというだけではなく、店を“街の風景の一部”として成立させていることが大きいです。道路に面した開放感、ガラス越しの見え方、テーブル配置、店内外の雰囲気などが、写真に撮られやすく、待ち合わせにも使いやすく、入店のハードルも下げています。人が入っている様子自体が広告のように見えるので、人気が人気を呼びやすい構造です。
2. コーヒー専門店に見えて、実は間口が広い
KATINATは名前だけ見るとコーヒー中心のブランドに見えますが、実際にはミルクティーやフルーツティーなどの存在感も大きく、かなり間口の広いドリンクブランドです。報道でも、ブランドを象徴する存在としてコーヒーより茶系ドリンクが印象に残るという見方が出ています。これはかなり重要で、純粋なコーヒー好きだけを狙うのではなく、グループ客、甘いドリンクが好きな人、写真映えを求める人まで取り込めるからです。
ベトナムでは、カフェは一人でコーヒーを飲みに行く場所でもありますが、同時に友人と行く場所でもあります。そうすると、全員がブラックコーヒーを求めているわけではありません。KATINATはその点でとても強く、コーヒー派にも、茶系ドリンク派にも、軽く甘いものを楽しみたい人にも対応できます。店選びで外しにくいブランドになっているのは、このメニュー設計の広さが大きいです。
3. “今っぽさ”の出し方がうまい
KATINATは、昔ながらのローカルカフェのような渋さで勝負するブランドではありません。むしろ、ベトナムの若い世代が「今行きたい」と感じる空気をうまく作っています。会員アプリの展開、限定キャンペーン、コラボ企画なども含めて、飲み物だけで終わらない接点を増やしています。公式サイトでも会員アプリのリリースやブランドコラボが確認でき、単なる店ではなく、継続的に話題を作る仕組みを持っていることがわかります。
この“今っぽさ”は、デザインだけではありません。若い人たちが自分の時間を過ごす場所として気軽に選べること、友人同士でシェアしたくなること、SNSに載せたくなること、チェーンでありながら少し特別感があること。その全部が合わさって、「無難な定番」より一歩先のポジションを取っています。
4. サイゴンの物語を持っている
KATINATが単なる量産型チェーンと違って見えるのは、ブランドの背景に物語があるからです。名前の由来が旧サイゴンのCatinatにあるという話は、それ自体がブランドの世界観を作っています。しかも、昔の名前をそのまま使うのではなく、現代的な“K”に置き換えている点が象徴的です。伝統や街の記憶を下敷きにしつつ、若い世代に向けて新しく見せる。このバランス感覚が、KATINATのブランドらしさにつながっています。
ベトナムの都市型カフェはたくさんありますが、ただ洗練されているだけでは印象に残りにくいです。その点、KATINATは「サイゴン感」という文化的なフックを持っているので、ブランドとしての輪郭が立ちやすいです。コーヒーそのものよりも、ブランドの空気に惹かれて入る人が多いのは、こうした物語性があるからだと考えられます。

KATINATはどういう人たちに支持されているのか
KATINATの中心的な支持層は、都市部の若い世代です。学生、若手社会人、オフィスワーカー、友人同士でカフェを使う人たち、軽作業や勉強で滞在したい人たちに特に相性が良いブランドだといえます。これは単なる印象ではなく、若年層向けの展開や、話題性・写真映え・チェーンの安心感を組み合わせた設計からも自然に見えてきます。
学生・20代前半の若者
まずわかりやすいのが、学生や20代前半の層です。彼らにとってKATINATは、飲み物を買う場所であると同時に、時間を過ごす場所でもあります。勉強、軽い打ち合わせ、友達とのおしゃべり、写真を撮る、SNSに上げる。こうした複数の目的を一度に満たしやすいため、「とりあえずKATINATにしておこう」となりやすいのです。
しかも価格帯は高級すぎず、ローカル店ほど入りにくくもないので、若い層にとって絶妙に使いやすいポジションです。ベトナムの都市部では、カフェはかなり日常的な存在なので、繰り返し通えることも重要です。KATINATは“特別すぎないけど、ちゃんと今っぽい”というバランスがうまく取れています。
若手社会人・オフィスワーカー
次に強いのが、若手社会人やオフィスワーカーです。ベトナムの都市部では、カフェは仕事の合間の休憩場所でもあり、ちょっとした打ち合わせの場でもあります。KATINATはチェーンとしての安定感がありつつ、Highlands Coffeeほどベーシックすぎないので、「少し気分を上げたい」「雰囲気のいい場所を選びたい」というときに選ばれやすいです。
また、店の雰囲気自体が“だらしなく見えない”のも強みです。打ち合わせにも使えて、友人とのカジュアルな時間にも使える。その中間のポジションにいるのがKATINATらしさです。
SNS感度の高い層
KATINATは、SNS感度の高い層にもかなり相性がいいブランドです。ドリンクの見た目、店内の雰囲気、ブランドカラー、限定施策など、写真にしたときに伝わりやすい要素が多いからです。ベトナムでは、特に若い世代にとってカフェは「どこで何を飲んだか」を共有する文化とも結びついています。そのため、ただ味がいいだけではなく、見せたくなるかどうかが大きな意味を持ちます。
KATINATはこの点をよく理解していて、店そのものを“体験の舞台”として設計している印象があります。人気があるというより、人気であることが見た目からも伝わるブランドになっています。
KATINATの人気はコーヒーの味だけでは説明できない
KATINATを見ていると、「人気チェーン=コーヒーが特別に美味しいから」という単純な話ではないことがわかります。もちろん一定の品質と安定感はありますが、KATINATの強さは、味だけでなく、ブランド全体の総合点にあります。飲み物、空間、立地、世界観、話題性、客層との距離感。その全部が揃っているから、都市部で強い存在感を持てるのです。
これは、ベトナムの現代カフェ市場を理解するうえでも重要なポイントです。昔ながらのローカルカフェ文化が強い国であっても、若い世代は「味の良さ」だけではなく、「そこでどう過ごせるか」「そのブランドが自分の感覚に合うか」も重視します。KATINATは、その感覚をかなり的確につかんでいます。
Highlands CoffeeやPhúc Longと何が違うのか
KATINATを語るとき、他の大手チェーンとの違いも気になります。ベトナムで定番感が強いのはHighlands Coffeeで、より飲料ブランドとしての広がりを見せるのがPhúc Longです。その中でKATINATは、より若く、より写真映えし、より“今の都市生活”に寄せたブランドという位置づけがしっくりきます。
Highlands Coffeeは、いわばベトナム都市部の日常そのものに近いブランドです。安定感、普遍性、入りやすさがあり、誰にとっても使いやすい。一方でKATINATは、そこにもう少しトレンド感や視覚的な華やかさを乗せています。Phúc Longは茶系も強く、やや洗練された現代ブランドとしての印象がありますが、KATINATの方が若者にとって“見せたくなる場所”としての力が強いと感じられます。
つまりKATINATは、定番チェーンの延長線上にありながら、「ただの無難」に留まらないことが支持につながっています。チェーンの安心感は欲しいけれど、少し気分の上がる場所を選びたい。その需要にうまくはまっているブランドです。
Phê Laとの関係は?同じブランドなのか
KATINATとPhê Laの関係は、非常に気になるポイントです。結論からいえば、同じブランドではありません。ただし、資本・経営面では近い関係にあります。報道では、Trương Nguyễn Thiên Kim氏がKATINATで84%超、Phê Laで51%を保有しているとされており、両ブランドに強く関わっていることが確認できます。
このため、「KATINATとPhê Laは同じグループっぽい」と見られるのは自然です。実際、外から見るとどちらもベトナム都市部で急速に存在感を高めた人気ドリンクブランドであり、話題性やブランディングのうまさという点でも共通点があります。ただし、ブランドの出発点や商品思想はかなり違います。
Phê Laは“特産オーロン茶”が核
Phê Laについては、創業者Nguyễn Hạnh Hoa氏のインタビューで、ブランドの出発点がBảo Lộcの特産オーロン茶にあることが語られています。つまりPhê Laは、もともと「ベトナム産の特産オーロン茶をどう届けるか」という発想から生まれたブランドです。これはかなり重要で、Phê Laの本質は単なるミルクティーブランドではなく、特産茶葉を軸にしたブランドだということです。
また、同インタビューでは、Phê Laがベトナムの農産物や文化性をブランドの核にしていることもはっきり示されています。つまりPhê Laは、“原料の物語”がかなり強いブランドです。茶葉や産地、クラフト感、ベトナムらしさの再編集が中心にあります。
KATINATは“都市型ライフスタイルブランド”寄り
それに対してKATINATは、コーヒーや茶系ドリンクを扱いながらも、原料のストーリー一本で押すというより、都市生活の中でどう見えるか、どう使われるか、どう話題になるかに強いブランドです。もちろん素材やメニューも大切ですが、店づくりや雰囲気づくりの比重がより大きいと感じられます。
この違いをひとことで言うと、Phê Laは「特産素材起点」、KATINATは「都市体験起点」です。どちらもベトナムの現代ドリンク文化を代表するブランドですが、人気の作り方は同じではありません。
KATINATとPhê Laは競合か、棲み分けか
実際の市場では、KATINATとPhê Laはある程度競合しているように見えます。どちらも若い層を惹きつけ、都市部で映えるブランドとして認識されやすいからです。友人同士で集まるとき、勉強や軽作業をするとき、SNS映えするドリンクを楽しみたいときなど、利用シーンも一部重なっています。
ただし、ブランドの印象はかなり異なります。KATINATはより都会的で、ドリンクブランドとして幅広く、ややオールラウンドです。Phê Laはお茶の個性や原料の物語が前に出やすく、独自色が強いです。そのため、完全な代替関係というより、「似た支持層を持ちながら、少し違う欲求を満たすブランド」と見た方が実態に近いです。
KATINATに惹かれる人は、雰囲気、写真映え、今っぽさ、使いやすさを重視する傾向があり、Phê Laに惹かれる人は、茶葉の個性、ブランドコンセプト、少し独特な世界観に惹かれやすい印象があります。もちろん両方好きな人も多いですが、ブランドの重心は明確に違います。
ダナンでKATINATに入る価値はあるのか
ダナン旅行中に「わざわざチェーンに入る必要はあるのか」と感じる人もいるかもしれません。たしかに、ローカルカフェを優先したい気持ちは自然です。ただ、KATINATのようなチェーンには、ローカル店とは別の面白さがあります。それは、今のベトナムの都市文化がどういう方向に進んでいるかを体感できることです。
ローカルカフェでは、昔ながらのベトナムコーヒー文化、生活に根ざした時間の流れ、素朴な一杯の魅力が感じられます。一方でKATINATでは、若い世代が何を“今っぽい”と感じているのか、ベトナムの都市生活でどんなブランドが支持されるのかが見えてきます。どちらが上という話ではなく、見えるベトナムが違うのです。
そのため、ダナンでカフェ文化をより立体的に理解したいなら、ローカル店とKATINATの両方に入ってみるのがおすすめです。片方だけでは見えないベトナムがあります。
KATINATが人気な理由をひとことでまとめると
KATINATの人気をひとことでまとめるなら、「若い都市生活者の感覚に合う形で、カフェをライフスタイル化したブランド」だからです。コーヒーを売っているだけでもなく、空間を売っているだけでもなく、流行だけでもありません。ベトナムの若い世代が求める“使いやすさ”と“気分の上がり方”のちょうど中間にいるのがKATINATの強さです。
しかもそこに、旧サイゴンのCatinatに由来する物語や、写真映えする店舗、茶系ドリンクまで含む広いメニュー、会員アプリやコラボで継続的に話題を作る仕掛けまで重なっています。人気になるべくして人気になったブランド、と見るのが自然です。
まとめ
KATINATが人気なのは、単純にコーヒーが美味しいからだけではありません。存在感のある店舗、都市的で今っぽい空気、写真映えする見せ方、コーヒー以外も強い広いメニュー、若い世代との距離の近さ、そしてサイゴンの記憶を下敷きにしたブランドの物語まで含めて、全体設計が非常に上手いからです。
支持されているのは、主に都市部の学生、若手社会人、SNS感度の高い層、雰囲気のよい場所で過ごしたい人たちです。無難なチェーンより少し気分が上がり、ローカル店より入りやすい。その絶妙なポジションが、KATINATの強さになっています。
Phê Laとの関係については、資本・経営面で近い一方、ブランドの核はかなり異なります。Phê Laは特産オーロン茶を軸にした素材起点のブランドで、KATINATは都市型ライフスタイルブランドとしての色が強いです。同じ現代ベトナムの人気ブランドでも、何で人を惹きつけているのかは違います。
ダナンでKATINATを見かけたときは、ただのチェーンカフェとして通り過ぎるのではなく、「今のベトナムの若者文化が集まる場所」として眺めてみると面白いはずです。ローカルカフェとは違う角度から、ベトナムの都市の空気が見えてきます。
※KATINATはダナンで複数店舗あります。


